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どんなに悪い習慣でもマインドフルネスで叩き直すための4ステップ

Four

 

どんな悪癖もマインドフルネスで治る!かも

渇望する心(The Craving Mind」を読了。著者のジャドソン・ブリュワーさんはマサチューセッツ・メディカル・スクールの教授で、「マインドフルネスで禁煙できないか?」って問題に取り組んでる人です。

 

 

周知のとおりタバコってのはもっとも対策が難しい悪癖のひとつでして、いまのところはまだ「これで確実に禁煙できる!」みたいなメソッドが確立してないのが現状。ところが、ブリュワー博士がマインドフルネスを導入したところ、

 

マインドフルネスのトレーニングを行なったグループは、そうでないグループに比べて2倍も禁煙に成功する確率が高かった。さらに素晴らしいことに、いったん禁煙に成功した後で、再びタバコに手を出してしまう確率も大きく下がった。こちらは、マインドフルネスのトレーニングを受けなかったグループに比べて約5倍だ。

 

だったらしい。もちろん、ここらへんのデータはちゃんとしたRCTが行われてまして、信頼性はそこそこ高め。2倍の成功率ってのはちょっと凄いんじゃないでしょうか。

 

 

悪癖に「興味を持って接する」

習慣化の心理学にくわしい人であれば、おそらく「悪い習慣は治らないから置き換えよう!」みたいなフレーズを聞いたことがあるかと思います。タバコを吸いたくなったらガムを噛むとか、お菓子を食べたくなったらフルーツを口にするとか、そういったことですね。

 

 

もちろん、これはこれで効果のある手法なんですが、マインドフルネスの場合は「置き換え法」を使わないのがミソ。ブリュワー博士いわく、

 

実験データが示したのは、マインドフルネスが「タバコ」と「渇望」のリンクを切り離している、という事実だ。

 

とのこと。要するに、悪い癖が治らない人の脳では、「タバコを見る→激しい欲望が湧く」って流れがオートメーション化されちゃってるんだけど、マインドフルネスで自分の欲望を客観的にながめてみることで、負のリンクを切り離せるってことっすね。

 

マインドフルネスで悪癖に注意を払えば、私たちは自分の癖をより深いレベルで理解できる。タバコを控えるために、自分の欲望をコントロールしたり抑えつける必要はない。この「認識」こそがマインドフルネスのすべてなのだ。(中略)自分の行動の結果をもっとクリアに認識できるようになると、やがて古い習慣を捨て去り、新しい習慣が形成される。

 

ここで一種のパラドックのように思われるのは、マインドフルネスがたんに「興味を持って接する」という行為である点だ。自分の心と体に何が起きているのかを、興味を持ってより深く近づいて行くだけなのだ。不愉快な欲望を消すのは、この意思によるところが大きい。

 

タバコの欲望に頑張って抵抗するんじゃなくて、あえて興味を持って近づくことで逆に負の渇望は消えるんだよー、という話ですね。合気道の達人みたいな話ですな。

 

 

といっても、言うは易く行うは難し。具体的に「悪い癖に手を出しそうになったらどうすればいいの?」ってのが気になるとこですが、ブリュワー博士は「RAIN法」をオススメしておられました。以前に紹介した「マインドフルネスを日常生活に活かすための「RAIN」法」とほぼ同じものなんですが、本書の記述のほうがくわしかったんで再掲しておきましょう。

 

 

悪癖をマインドフルネスで治すための「RAIN法」

RAINはマインドフルネスを実践するために必要なステップの頭文字を取ったもので、

 

  1. Recognize
  2. Accept
  3. Investigate
  4. Note

 

の4つから成り立っております。ざっくり紹介すると、

 

 

1. レコグナイズ(認識)

ストレスで自動的にタバコに手が伸びそうになったら、そこであらためて自分の行動を言葉にしてみるフェーズ。

 

  • あー、いま仕事に煮詰まったせいでタバコが吸いたくなったんだな
  • いまLINEをチェックしたくなったぞ。これは今日で3回目だなぁ

 

みたいな感じです。とりあえず自分の欲望に気づいてみるのが第一歩。

 

 

2. アクセプト(受容)

自分の中に「タバコを吸いたい!」って欲望があるのを認めるフェーズ。というと「あきらめるってこと?」と思われがちなんですが、あくまで「自分はいまタバコを吸いたい欲望を感じている」「LINEをチェックしたい欲望がある」って事実を認めればOKであります。

 

 

非常に簡単なようですが、これが慣れないうちはかなり難しいステップなんですな。「頭がかゆい!」と感じても反射的に頭皮を引っかかずに、「あー、いま頭をかきたい欲望があるなぁ」と認めていくようなもんですからねぇ。

 

 

ちなみにブリュワー博士は、もし自分の欲望に気づいたら、たんに軽くうなづいて「これだな(here we go.)」と言ってみるって方法をオススメされておりました。「here we go」の語感が難しいんですけど、「おっ、欲望が来たな!」ぐらいのイメージですかね。

 

 

3. インベスティゲート(調査)

 

アクセプトをしたら、次は「好奇心」を持って欲望を調べてみるフェーズであります。

 

  • いま自分の体はどんな感覚だろうか?
  • この欲望はどれぐらいの強さだろうか?

 

みたいに自分の欲望を観察して行くイメージ。とりあえず、科学者が研究を行うように、自分の欲望を調査してみるようなイメージが良いかと思われます。

 

 

4. ノート(言語化)

最後に自分の欲望を言語化していくステップです。欲望にキャッチフレーズをつけるようなイメージですね。

 

最後に、自分の経験を言語化してみよう。ここでは、短いフレーズかひと単語でシンプルに言語化するのがポイントだ。たとえば、思考、胃がムカムカ、激しい感覚、燃えるような感覚、といった感じだ。

 

この言語化の作業を、欲望がおさまるまで続けてみよう。もし言語化から意識がそれたら、また調査のステップに戻って「いまの感覚などのようなものだろうか?」と質問を繰り返してみればいい。

 

 

って感じで、シンプルに欲望を言葉にしていくといい感じです。この手法についてはfMRIを使った研究も行われていて、自分の欲望を正確に言葉にできた参加者ほど、実際に脳の感情コントロールエリア(扁桃体)の活動が治ってたそうな。

 

 

まとめ

そんなわけで、禁煙に限らず、ダイエットや勉強の効率アップなどに幅広く使えそうな良いテクニックではないでしょうか。私も欲望が湧いたときは「調査」と「言語化」は非常によく使っておりまして、「効果があるなー」などと感じております。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。