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結局、ワインは体にいいのか悪いのか?問題

Wine

 

パレオダイエットの教科書」で「酒は基本的にパレオダイエットじゃないけど、まぁワインはいいかも……」といった玉虫色の話をチラッと書いたところ、

 

  • ワインは結局オススメなの?
  • ワインは飲まないほうがいいの?

 

みたいなご質問をいくつかいただきましたんで、そのへんの話をまとめておきます。

 

 

 

 

そもそもワインはパレオダイエットなのか?問題

で、まずは「ワインって人類の体に適してるの?」みたいな話から。

 

 

これについては状況証拠から推測するしかないんですけど、とりあえず人類がワインを積極的に飲むようになったのは7000年前ぐらい。イランの村でブドウを発酵させた飲料の形跡が見つかってたりします。

 

 

だいたい「1万年前より後に生まれたものは警戒してかかる」ってのがパレオダイエットの前提なんで、その点からすればワインはやや微妙っすね。もちろん、古代人も自然に発酵したフルーツからアルコールを摂取してただろうとは思うものの、いまの時点では体が対応してないと考えたほうが良さげ。

 

 

とはいえワインが体にいいのは間違いない

もっとも、いっぽうでは「ワインは体にいい!」ってデータも山ほどあったりします。とにかく数が多いので、有名なところだけざっくり紹介しましょう。

 

 

1. ワインは寿命を延ばす

約25万人を追っかけた2000年の観察研究(2)によると、

 

  • 適度にワインを飲む人(1日にグラス2杯ぐらい)は、ビールや蒸留酒を飲む人よりも全死亡率が下がっていた!
  • ただしワインでも飲み過ぎれば全死亡率は上がる

 

だったそうな。これはワインにふくまれるポリフェノールのおかげで、心疾患やガンの発症率が下がるのが原因だろう、とのこと。

 

さらに、13000人を11年ほど追っかけた1995年の研究(3)だと、

 

  • 1日にグラス3〜5杯のワインを飲む人は、酒を飲まない人より早期死亡率が低かった!

 

なんて結果も出てたり。まぁこの研究については不確定な要素が多くてアレですが、どうもワインが体にいいのは間違いなさそう。

 

 

2. ワインと若返り

ワインがどこまでアンチエイジングに良いかはわからんのですが、とりあえず「抗酸化作用がありまくるよ!」ってデータはかなり多め。わりと質が高いデータを紹介すると、

 

  • 35人の健康な女性を対象にした実験では、ワインを飲んだグループには体内の炎症マーカーが減る現象が確認された(2007年,4)
 
  • 1日にグラス2杯のワインを飲んでもらう実験では、1週間で参加者の抗酸化能力が上がっていた(2009年,5)

 

  • 1日250mlのシチリアワインを飲んでもらった実験では、4週間で参加者の炎症レベルが下がった(2006年,6)

 

みたいな感じ。ご存じのとおり、体内の炎症は老化をもたらす最大の原因なんで、こいつが改善するってことは、長期的にワインがアンチエイジングに効く可能性は高そうだなー、という感じ。

 

 

3. ワインで頭は良くなるか?

一部のデータでは「ワインは脳の健康にいいよ!」なんて結果も出てたりします。上で紹介したワインの抗酸化能のおかげで、脳の炎症ダメージが抑えられるみたいなんですな。

 

 

たとえば、2010年の観察研究(7)なんかでは、5033人を7年にわたって追いかけたところ、1日2杯ぐらいのワインを飲む人は、他の酒を飲む人よりも認知テストの成績が良かったとか。それどころか、女性に限っては、酒を飲まない人よりもワイン好きの方が脳の機能は高かったらしい。

 

 

まー、このへんも不確定要素がかなりあるんでハッキリは言えないものの、ワインの抗酸化パワーが脳に効いてくれる可能性は高そう。ほかにも、ワインで認知症やパーキンソン病のリスクが低下!って観察研究は死ぬほどありますしね(8,9,10)。

 

 

4. ワインで腸内細菌は整うか?

さらに、ワインには腸内細菌を増やす働きもあったりします。たとえば、2012年に10人を対象にした実験(11)では、1日2杯の赤ワインを飲む人は、ジンの愛好家よりもビフィズス菌やエンテロコッカスの量が増えてたとか。

 

 

もうひとつ、23人を対象にした実験(12)では、赤ワインとバクテロイデス(俗に言う痩せ菌)のあいだに相関が見られたりとか。こちらも気になるところ。

 

 

もちろん、以上のデータはサンプル数が少なすぎなんで、ここから決定的な結論を出すのはムリではあります。が、以前にもチラっと書いたとおり、ポリフェノールは腸内細菌のエサになる性質を持ってるんで、ワインが腸内環境の維持に役立つ可能性は普通にありそう。

 

 

とはいえワインに弱点があるのも間違いない

というわけで、ワインには確かにメリットがあるものの、やっぱ基本はアルコールなんでそれなりのデメリットも存在はしております。たとえば、

 

  • 腸内細菌が死ぬ:アルコールにはリーキーガットを引き起こす性質がある(13)ため、飲めば飲むほど体内にエンドトキシン(毒素)が入り込む可能性が高い。ただし、上記のとおりポリフェノールには腸内細菌を増やす働きもあるんで、そこで効果が相殺される可能性はある。

 

  • 乳がんが増えるかも:観察研究だと「赤ワインが癌予防になる可能性があるよ!」って傾向も出てるんですけど、いっぽうでは「ほんの少しのアルコールでも乳がん発症率が上がる」ってデータ(14)もあるのがありがたい話です。

 

  • グルタチオンの枯渇:グルタチオンってのは抗酸化作用が高いアミノ酸の一種で、アンチエイジングには絶大な働きを持っております。が、肝臓がアルコールを分解する際にはグルタチオンが欠かせないもんで、酒を飲むとどうしてもグルタチオンの総量が減っちゃうんですな。

 

  • 遺伝的にムリなケース:ご存じのとおり、日本には生まれつきアルコールが代謝できない人も多く存在しております(15)。その場合は、どんな酒でも癌の発症率が上がり、肝臓もダメージを受けやすくなるのでご注意ください。

 

  • 硫黄に弱いケース:多くのワインには、酸化防止剤として硫黄が使われてたりします。が、一部の人は先天的に硫黄に弱いケースがありまして(16)、その場合はワインでアレルギーのような症状が出る可能性が大。自分が硫黄に強いか弱いかどうかを確かめるには、とりあえずドライフルーツを食べて見て、体に不調が出るかどうかをチェックしてみるのが良いかと。

 

といったところ。結局、ほとんどはアルコールの問題なので、これはワインが酒である限りどうにもならない現象ですね。

 

 

まとめ

そんなわけで、以上の話をまとめると、

 

  • ワインが他の酒より体にいいのは間違いない
  • ただし、いま酒を飲んでない人が無理してワインを飲む必要もない(普通にフルーツからポリフェノールを取れば十分)
  • ワインを飲むならぜひ赤ワインで(白はポリフェノールが少ないんで)。あと、あんま加工レベルが高くないほうがいいよ!(加工度が少ないほうが良い菌の量も多いんで)

 

みたいなとこです。もちろん酒の影響は個人差が大きいんで、ワインを日常に取り入れる際は、

 

  1. いったん2〜4週間ぐらい酒を止める
  2. それから赤ワインを飲んで、体に異変がないかをチェック

 

のような手順を踏むのがよろしかろうと思われます。どうぞよしなに〜。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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