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意志の力よりも目標の達成率を激しく高める「3つの感情」とは?

Goal

意志力よりも感情のほうが大事

当ブログでは、よく「意志力って実は使ってもすり減らないかも?」なんて話を書いております。すごーくざっくりいうと、

 

  1. WILLPOWER 意志力の科学」などでは「人間のセルフコントロール力は使えば使うほど筋肉のように疲労していく」と言われてきた
  2. ところが、その後の追試では同じ現象が確認されないケースが増えてきた
  3. 何が正しいのかわからずカオスに!

 

ってのが現在までの流れです。まだ「意志力の消耗」説は完全否定されたわけじゃないものの、実際は「人間のセルフコントロールってのは、もっと複雑な現象なんだろうな〜」ってのは間違いなさげ。

 

 

そんな状況下、「Emotional Success(感情による成功)」って本は、「意志力よりも感情のコントロールにこだわろうぜ!」って主張が展開されてておもしろかったです。

 



意志力より本当に役立つものを考えてみよう!

本書の著者は、ノースイースタン大学の心理学者であるデイヴィッド・デステノ博士。日本だと「信頼はなぜ裏切られるのか」で有名な先生ですね。

 

 

で、本書が「意志力」より「感情」を重んじてる理由は簡単で、意志力がまったくあてにならないから。アメリカの統計によれば、新年の初めに立てた目標の25%は1月8日までに挫折してるんだそうな。

 

 

この問題を防ぐために、多くの人は意志力を発揮しようと頑張るんだけど、そもそもこれだけ失敗率が高い戦略を使うのは時間の無駄。もうちょい「本当に使えるもの」を考えようぜ!ってのが本書の問題意識なんですな。

 

 

意志力よりも目標達成に役立つ3つの感情

そこで博士が最近のデータをベースに導き出したのが「意志力より感情のコントロールを目指せ!」ってソリューション。具体的には、人間のセルフコントロール能力を高めるには、以下の3つが大事だとおっしゃっております。

 

  1. 感謝
  2. 思いやり
  3. プライド

 

過去のデータによれば、これらの感情レベルが高い人ほど目の前の誘惑に強いし、将来のために頑張るモチベーションもアップするんだそうな。

 

 

たとえば、当ブログで過去に紹介した話だと、「感謝の気持ちで衝動買いが減る」や「感謝の気持ちで貯金が増える」なんてデータがあったり、「自分へ思いやりがないとダイエットに失敗する」みたいな研究があったりしますからねぇ。

 

 

また、この本に出てるデータでは、実験の参加者に「過去に自分が何かに感謝をした経験を思い出してください」と指示しただけでも、セルフコントロール能力が2倍に上がったんだそうな。どうやら、上にあげたような感情には、セルフコントロール能力をブーストさせる効果があるみたい。

 

 

なぜ3つの感情がセルフコントロールに効くのか?

では、なんで「喜び」や「幸福感」といった他のポジティブな感情よりも、「感謝」「思いやり」「プライド」という3つのほうが有効なのかといえば、

 

  • どれも他者との協力と道徳に関する感情だから!

 

ってことらしい。自分を他人との協力に向かわせるような感情には、いずれもセルフコントロール能力を高める力があるんだ、と。いい話ですねぇ。

 

 

これは考えてみれば当然の話で、人類は数百万年のあいだ、同じ部族の仲間と協力し合いながら進化してきたわけです。このシステムをうまく働かせるには、人間は思いやりがなきゃいけないし、他者への共感力が必要だし、正直で公平でなきゃいけないわけです。

 

 

ここで大事なのが、「他人との協力」にはセルフコントロール能力が絶対に必要なところ。つまり、もともと感謝、思いやり、プライドといった感情は、他人との協力を促進するために生まれたものじゃないの?とデサント博士は考えてるんですな。

 

 

確かに、「感情」ってのは最強のモチベーションブースターなんで、感謝などの気持ちで動いてる限り、欲望を無理やり押さえつけて消耗せずに済むわけです。これはナイスな説ですね。

 

 

なぜプライドがセルフコントロールに効くのか?

というと、ここで「プライドも大事なの?」と思う方がいるかもしれません。いまの日本では「プライドが高い」ってのは悪い表現なんで、いまいち納得しづらいかと思われます。

 

 

が、博士が主張する「プライド」は、あくまで「自分の能力への信頼感」みたいな意味合い。「他人よりもオレは優れているのだ!」っていうナルシスト的なプライドとは違う概念なんですな。

 

 

博士いわく、

 

もしも、あなたが周囲もうらやむようなスキルを持っていれば、その技術を磨くためのモチベーションが生まれるだろう。他人にとって自分が有用な人間になれるように、さらにそのスキルを高めたいと思うはずだ。

 

ってことで、やはりプライドも他人との結びつきを強める機能を持ってるんだ、と。なるほどねぇ。

 

 

3つの感情を高めるにはどうすればいいの?

では、3つの感情を高めるためにどうすればいいのかというと、

 

  • 感謝三行日記をつける。「誰かがドアを押さえててくれた」ぐらいの小さな感謝を毎日記録してけばOK。最低でも3週間は続けて欲しい、とのこと。

 

 

  • プライド:プライドを身につけるのは長い作業になるので、自分が得意なスキルをコツコツと磨いていくしかない。ただし、ここで「ゴールの達成」だけにプライドを感じてると長続きしないので、あくまでプロセスにプライドを持つように意識してね!だそうです。

 

といったところ。いずれにせよ、感情を鍛えるのは一筋縄じゃいかないんで、どの手法も長期戦の構えでのぞむしかなさげ。ただし、いったん3つの感情を鍛えちゃえば、あとはムダな疲労感もなく目標の達成率が高まるかと思われます。

 

 

そんなわけで本書は、「他人に善きことなすために感情を鍛えよう!それが成功への道だ!」と訴えるナイスな一冊でありました。アダム・グラント博士が絶賛してるので、そのうち邦訳も出るかと思われます。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。