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「年を取って性格が丸くなった」は本当に起きる現象なのか?

Change

  人の性格は変わるのか、変えられるのか?問題

人の性格は変えられるのか?」って問題については諸説ありますな。

 

 

たとえばハーバード大学のブライアン・リトル博士なんかは、性格はかなりのとこまで遺伝で決まってるから行動を変えるように意識した方がいいよ!って立場。いっぽうで2万人以上を調べたメタ分析なんかでは、不安になりやすい傾向なら4週間で変えられるよーって結果を出しております。

 

 

つまり、性格の話はいろいろあって特定のストーリーを導くのは難しいんですが、

 

  • とりあえず性格の設計図みたいなものはかなり遺伝が左右してるっぽい
  • でも、真面目さとか不安になりやすさみたいな一部の性格に関しては、後からでもジワジワと変えられるのかも

 

ぐらいの印象であります。いまんとこの私の考え方については、

 

 

の2つにまとまってますんで、その辺を参考にしていただければ幸い至極。

 



年を取ると性格はどう変わるか?

ってところで今回のお題は「性格は時間で変わるんじゃないの?」って問題について。「年を取って性格が丸くなった」みたいな話はよく聞きますが、あれは本当に正しいのか?って話ですね。

 

 

そこを調べてくれたのが、ノースウエスタン大学の新しい論文(1)。まだ査読前の状態なんですけど、内容がおもしろいんでメモしときます。

 

 

これは、過去に出た14件の観察研究をまとめたもので、サンプル数はだいたい5万人ぐらい。おもにアメリカ、ヨーロッパ、スカンジナビアの男女を長期にわたって観察して、年をとるごとに性格がどう変わるのかをチェックしております。

 

 

それなりに厳しい基準をパスしたデータだけを使ってまして、信頼性としてはまずまず。参加者の観察期間は数十年に及んでおります。

 

 

年を取ると少しずつ不安が減るが、社交性も減っていく

で、それで何がわかったかと言いますと、

 

  • とりあえず年をとるほどビッグファイブが変化していくのは間違いない

 

って事実です。「ビッグファイブ」は正確性が高いパーソナリティ分類のことでして、くわしくは「3分で自分の性格を正しく理解する「ショートビッグファイブ検査」」などをご覧頂ければ幸いです。

 

 

では、さらに具体的にどんな変化が起きるのかと言いますと、

 

  • なぜか調和性は一生を通じてあんまり変わらない
  • そのほかの性格は、10年ごとに1〜2%ずつ低下していく

 

だったそうな。もうちょい簡単に言いますと、

 

  • 年を取ると… 
    • 感情はわりと安定しやすくなる
    • 社交性は減っていく
    • 好奇心も減っていく
    • セルフコントロール能力も減っていく

 

みたいな感じです。というと何だか悪いことの方が多そうですけど、他のデータでは「年を取るほど幸福度は上がるよ!」って結果が多く出てるんで、それだけ感情の安定が大事ってことなのかもしれませんが。

 

 

まとめとか

といっても、これはあくまで全体的な傾向でして、個別にデータを見ると、なかには「なんの変化もない!」とか「逆に社交性が増えた!」みたいな事例も結構あるんで、かなり個人差が大きそうな話ではあります。実際、別のデータでは、「人生でいろんな責任を負った人(仕事とか結婚とか)ほど、年を取ると良い性格になる」っていう現象も確認されてたりしますからね(通称「成熟原理」)。

 

 

ってことで、なんで年を取って性格が変わる人と変わらない人がいるのかはまだ不明なものの、基本的にヒトは加齢とともにジワジワと不安が減っていく可能性は多そう。つまりは、

 

  • 年を取ったら不安減少のメリットを活かしつつ、好奇心とセルフコントロール能力がすり減らないように注意するといいよ!

 

ってことでしょうか。私も気をつけねば…。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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