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頼み事の成功率を激しく高める「ピークテクニック」の使い方

Negotiation

 

定番の説得法「ピークテクニック」とは? 

心理学の世界では、他人にお願いを聞いてもらう方法として、「ピークテクニック」 ってのがよく使われます。

 

 

「ピークテクニック」は、1994年のカリフォルニア大論文(1)で有名になった手法。研究チームは、ホームレスの方に協力をお願いして、通行人に「小銭をくれませんか?」と声をかけまくってもらったんですね。

 

 

その際、お願いの仕方を3つにわけまして、

 

  1. 「小銭をいただけせんか?」
  2. 「25セントいただけませんか?」
  3. 「37セントいただけませんか?」

 

のパターンで成功率の違いをみたんですな。



「ピークテクニック」で交渉の成功率が激しくアップ

それで結果がどうなったかというと、

 

  1. 「小銭をいただけせんか?」=成功率44%
  2. 「25セントいただけませんか?」=成功率64%
  3. 「37セントいただけませんか?」=成功率75%

 

って感じ。シンプルに希望を言うよりも、具体的な金額を伝えたほうが成功率は上がり、さらにキリの悪い金額を申し出るとさらに相手はこちらのお願いを聞いてくれるようになったわけですな。おもしろいですねぇ。

 

 

つまり「ピークテクニック」ってのは、「ちょっと意外なことを言って相手の興味を引く(=Pique)」手法のこと。あえて「37セントをください」と切り出して、相手が「なんでそんな半端な金額を?」と思ったら成功であります。

 

 

意表をつく「頼み事」で反論を抑える

なせこの手法に効果があるかと言うと、反射的に相手の頭のなかの「反論」が抑えられるから。たんに「小銭をください」と言った場合は、「なんで君に?」みたいな断り文句が浮かぶのが普通でしょうが、

 

  1. あえてキリの悪い金額を伝える
  2. 相手が反射的に「なぜ?」と思う
  3. と同時に「なんで君に?」という断り文句が頭から押し出される
  4. 成功率アップ!

 

って思考の流れが起きるんですな。頼みごとの成功率を高めるには、意表をつくのが大事ってことですな。

 

 

で、ここで気になるのが、「ピークテクニックってどれぐらい効くの?」って問題。ほかの心理テクにくらべても効果があるのかってあたりは知っておきたいところです。

 

 

ってところで、近ごろ「ピークテクニックの効果を徹底的に調べたよ!」って論文(2)が出まして、なかなか良い感じでした。

 

 

「ピークテクニック」は交渉の初期段階で使うべし

これはニューヨーク州立大学の研究で、過去に出たピークテクニックの研究6件をまとめたメタ分析になっております。大半のテストは「ピークテクニックで募金の額は増えるか?」ってあたりを調べてまして、結果は以下のような感じ。

 

  • すでに募金を決めた参加者に「もっと額を増やしてください」って交渉をしたいときには使えない
  • しかし、まだ金を出すかどうか決め兼ねている人に「募金に参加しませんか?」って交渉をするときには効果大

 

って感じ。要するに、ピークテクニックは交渉の初期ステップではかなり有効ってことですな。なるほどねぇ。

 

 

「ピークテクニック」は「フット・イン・ザ・ドア」よりも効く

ちなみに、他の交渉テクニックとくらべた場合はどうかというと、「フット・イン・ザ・ドア」(小さな頼み事をしてから大きな頼み事をする手法)の効果量が0.11だったのに対し、ピークテクニックは0.27だった模様。セールスの定番テクニックよりも、ピークテクニックのほうが効果は大きいみたいっすね。

 

 

そんなわけで、なにか大事な頼み事をお持ちの諸兄におかれましては、まず軽く相手の意表をつくような申し出を心がけてみると勝率が上がるかもしれません。お試しあれ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。