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パレオな食事法:完全版「パレオダイエットってなに?2015年版 #2」

Foodies

シリーズ第一回目ではパレオダイエットの前提について書いてみましたが、ここでは具体的な食事法についてなど。



現代生活と遺伝のズレを調整する
軽く前回のおさらいをしますと、現代の暮らしとヒトの遺伝子には“ズレ”があり、これがいろんな不調や病気の原因になってるんじゃない?って話でした。この“ズレ”をざっくりまとめると、

  • 多すぎる:原始時代には少なかったが現代には豊富
  • 少なすぎる:原始時代には豊富だったが現代には少ない
  • 新しすぎる:原始時代には完全になかった

って感じ。というわけで、パレオダイエットの食事法も、この“ズレ”を調整するのが目標になります。つまりは、


▼多すぎるもの

少なすぎるもの

新しすぎるもの
  • トランス脂肪酸
  • 抗栄養素(他の栄養の吸収をジャマする成分)
  • 人工甘味料
  • 食品添加物 

 といった問題点をすり合わせていくわけですね。






パレオな食事のガイドライン
というわけで、パレオダイエットの食事ガイドラインは以下のようになります。

  • 三大栄養素のバランスは、狩猟採集民の平均データを参考にするのが無難。もちろん例外もあるんですが、ひとまず以下の範囲を超えないようにすればいいかと。
    • タンパク質 19-35%
    • 炭水化物 22-40%
    • 脂肪 28-56%

  • 加工食品は可能なかぎり避け、素材の形がわかる肉・魚・野菜を買って自炊する。

  • 食肉はできればグラスフェッドなものを選ぶ。ただし、ムリしてこだわらなくてもよし。

  • 乳製品・酒・チョコは食べてもいいが、あくまでたまの楽しみに。クオリティは厳選すること。

  • 水溶性食物繊維が豊富な食材を積極的に選ぶ(タマネギやネギなど)

  • オメガ3の多い食材は定期的に食べる(サケ、サバなど) 

  • 内臓系も定期的に食べる(レバーなど)


  • といっても、ガチガチにガイドラインを守るとストレスが大きいので、全体の食事の8〜9割を守ればOK。それでも十分に効果はありますんで、くれぐれも神経質になりすぎませぬよう。

  • パレオダイエットには痩せる効果がありますが、基本的には減量法ではないので注意。健康に気分よく暮らすための食事法だと考えていただければ幸いです。



積極的に食べたいもの 
以上の話をふまえまして、具体的に食べたほうがいい食品はこんな感じ。

  • 肉類:牛、豚、鶏、羊など、動物の肉は何でもOK。ただし鶏肉などは質が重要なので、できればグラスフェッドやケージフリーなものを選びたいところ。ただし、あんま神経質になってもよくないので、スーパーで売ってる肉でも別にいいとは思います。

  • 内臓類:内臓は栄養の宝庫なんで、ぜひとも積極的に。特にレバーはビタミンと必須アミノ酸が豊富なので、定期的に取り入れていきたい。そのほか、ハツでも腎臓でもタンでも脳でも、内臓系はガンガン食べましょう。

  • 魚類:魚にふくまれるオメガ3は、慢性的な炎症をふせぐために必須。サーモン、サバ、イワシ、ニシンといった脂肪の多い魚は、週に100〜200グラムはとりたい。

  • タマゴ:ビタミンDやタンパク質が豊富な超優良食品。コレステロールのことは気にせずに食べましょう。

  • 野菜全般:ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、ネギ、レタス、アスパラ、キノコ、カブ、キュウリなどなど、とにかく野菜は何でもOK。ガンガン食べましょう。

  • 根菜類:糖質制限ダイエットでは嫌われる根菜類ですが、パレオダイエットでは気にせず食べて構いません。サツマイモ、ジャガイモ、タロイモ、ニンジン、ゴボウなど、いずれもビタミンや栄養素が豊富な優良食品なので、怖がらずに食べてください。

  • フルーツ類:これまた糖質制限ダイエットの世界では嫌われものですけども、なにせ食物繊維と抗酸化物質の固まりなんでガンガン食べてください。

  • 発酵食品:現代人は狩猟採集民にくらべて腸内細菌のバリエーションが少ないので、発酵食品はマスト。




食べてもいいけどほどほどにしたいもの
続いて、「少なめ」を意識したい食品たちです。それぞれメリットもあるけど、デメリットも大きかったりしますんで、注意してお食べください。

  • 乳製品:体に良い面もあるんですが、どうしても脂肪の割合が多くなってセットポイントが上がりがちになるのが難点。また、市販の乳製品にはホルモン剤などの使用量が多いんで、口にするならできるだけオーガニックなものをどうぞ。

  • お酒:こちらも体に良い面がありつつも、肝臓はもちろん腸内細菌へのダメージが心配。目安としては1日にグラス2杯ぐらいまで。

  • ナッツ類:良質な脂肪と食物繊維をふくむ優良食品ですが、とにかくカロリー密度が高いので、つい食べ過ぎちゃうので注意。1日の目安としては軽く片手に乗るぐらいまで。

  • 白米:精米の過程で体に害をなす成分が取り除かれるので、その点では優良。ただしカロリーのわりに微量栄養素が少ないので、大量に食べるとバランスが悪くなっちゃう。

  • ドライフルーツ:こちらもカロリー密度が高いので食べ過ぎにつながる可能性が大。1日に片手に乗るぐらいならOK。


  • チョコレート:砂糖の多いチョコは論外ですが、ダークチョコレートは体に良いのでアリ。ただし、やはりカロリー密度が高いので、食べ過ぎにつながる可能性が大。パレオダイエットを始めた直後はひかえたほうが無難。

  • コーヒー・お茶:どちらも抗酸化物質が豊富なので、カフェインの量に気をつけて摂取されたし。目安としては1日のカフェイン量は200〜300mgぐらい。

  • 外食:これは店によりますが、多くの外食産業ではオメガ6の使用量が多いのが難点。ランチもふくめて、外食は週1ぐらいまでに抑えたいところ。


全体の食事量の1割以下に抑えたいもの
さらに以下が、パレオダイエットのNG食品。基本的にはヒトの遺伝子に対して「新しすぎる」ものがメインになっております。

  • 料理用の植物油:大豆油、キャノーラ油、コーン油、サフラワー油、グレープシード油、ピーナッツオイルなど。コレステロールゼロの宣伝文句に乗せられて使うと、大量のオメガ6をとって老化の引き金に。

  • 小麦食品 :パン、パスタ、ピザ、ビール、シリアル、オーツ麦、大麦、ライ麦、キヌアなどなど。カロリー密度が高いうえに抗栄養素もたっぷりなので、がんばって減らしましょう。


  • 清涼飲料水・エナジードリンク・ジュース類:カロリーが高いわりに栄養がなく、甘くて美味しい以外は問題だらけ。当然ながら、炭酸水やミネラルウォーターはOKです。ココナッツウォーターは、糖分が添加されていなければ大丈夫。




とはいえ、本当にパレオダイエットがいいってデータはあるの?
以上がおおまかな食事のガイドラインですが、最後に「パレオダイエットって科学的にはどうなの?」ってところを見ておきましょう。


▼状況証拠
現代の狩猟採集民たちに現代病が見られないのは、 シリーズ第一回目にも書いたとおり。まずは、これが大きな状況証拠になるかと思います。具体的には、

  • ガン
  • 心疾患
  • 腸疾患
  • 肥満
  • 糖尿病
  • ニキビ
  • 慢性炎症

といった現象がかなりレアなんですね。ところが、狩猟採集民たちが西洋風の食事をはじめると、一気に糖尿病や肥満が激増することもわかってまして(1,2)、これまた有力なデータかと。


▼実証研究
また、ここ数年は、各大学でパレオダイエットの実験が行われております。有名なところでは、


  •  2009年のランダム化比較試験(定番の実験方法)では、糖尿病の患者たちにパレオダイエットを3カ月ほど実践してもらったところ、従来の糖尿病食よりも糖代謝や心疾患リスクが改善した(3)

  •  29人のメタボ患者を対象にした2010年の実験では、カロリー制限をせずにパレオダイエットを12週間ほど実践してもらったところ、地中海式ダイエット(魚や全粒粉を多く食べる食事法)を行った患者よりも総摂取カロリーが少なくなり、レプチン(肥満をさまたげるホルモン)の分泌量が増えた(4)

  •  糖尿病と心疾患の患者を対象にした2007年の実験では、パレオダイエットを実践した患者は、地中海式ダイエットにくらべて糖代謝が改善し、ウエストサイズも大幅に減った(5)

  •  メタボ女性を対象にした2013年のランダム化比較試験では、2年にわたってパレオダイエットを実践してもらったところ、北欧栄養勧告(魚・野菜・パンをたくさん食べる食事法)にくらべて、体脂肪・中性脂肪・ウエストサイズなどが大幅に減少した(6)

など。かなり良い成績を残しているのではないかと。


▼弱点
とはいえ、もちろんパレオダイエットはまだ新しい食事法なので、絶対的な研究の量が少ないのが難点。さらには長期的な効果をみたデータも少なく、最長で2年間のデータしかないのも弱いところであります。


もちろん、個人的には「別に問題ないでしょう」と考えてますが、以上の弱点があることもご理解いただいたうえで、お試しになっていただければと思います。


まとめ
そんなわけで、いろい書いてきましたが、つまるところは「あらゆるダイエット研究から導き出された唯一の『正しい食事法』とは?」でご紹介した、


 加工食品を減らし、野菜をたくさん食べ、肉と魚は品質のよいものを厳選する

ってアドバイスに尽きる気もします。いずれにせよ、あんま神経質にならず、未加工の食品を楽しんでいただければ幸いかと。
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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。