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他人の心を読みたきゃ顔を見ないで声を聞け!という研究

Empathic 

  相手の心を読む最良の方法は?

表情を見ても相手の心は読めない!」みたいな話をちょっと前に書きましたところ、新たに「だったら声を聞けばいいじゃない!」と主張する論文(1)が出て、なかなか楽しいです。

 

 

これはイエール大学の研究で、1,800人の男女が対象。全部で5つの実験を行っていて、

 

  1. 相手の顔だけを見て心を読む
  2. 声だけを聞いて心を読む
  3. 顔&声から心を読む

 

という3パターンのうち、どれが最高の方法なのかをチェックしております。

 



 

声だけの会話から感情を採点させる

だいたいどんなデザインかというと、たとえばひとつめの実験では、全員に「女性たちがお互いにからかいあってるシーン」を記録したデータを見せた(聞かせた)んですね。「からかいあううシーン」ってのは、楽しさ、怒り、悲しみ、悔しさといったいろんな感情がふくまれるんで、他人の心を読むテストにはうってつけなんですな。

 

 

そのうえで参加者には、

 

  1. 音声抜きの動画だけを見せる
  2. 会話の音声だけを聞かせる
  3. 音声と動画を見せる

 

の3パターンでデータを視聴してもらい、それぞれの登場人物が抱いている感情を9点満点で採点してもらったんだそうな。

 

 

また別の実験では、参加者たちに生のコミュニケーションを指示しまして、同じように「声だけの会話」「声+表情を見ながらの会話」の2パターンで相手の感情を採点してもらったとのこと(「声だけ」のときは、部屋の電気を消して相手の顔が見えないようにしたらしい)。

 

 

声だけのほうが正確に相手の気持ちを見抜けた

その結果はいずれも同じで、すべての実験において「声だけ」を聞いたグループの圧勝表情に頼らずに声だけで相手の感情を判断したほうが、他人の内面を正確に見抜けたんですな。

 

 

研究者いわく、

 

今回の研究によれば、相手の表情を見ることは、その人の感情や意図を推測する最良のテクニックではない。

 

この結果は、感情について調査してきた心理学者たちにとっては驚きかもしれない。感情知性を測るテストの多くは、他人の表情を正確に読む能力をベースにしているからだ。

 

この研究でわかったのは、私たちはしばしば相手の表情に注意を向けすぎてしまうという事実だ。しかし、実際に相手の内面を正確に知りたければ、声のほうがよほど重要な情報を提供してくれる。

 

私たちは、もっと声に現れる感情に注意を向けるべきだろう。

 

とのこと。声のほうが優秀な理由はいろいろありましょうが、研究者は「表情に頼るとマルチタスクになっちゃうからじゃない?」と推測しておられます。表情は情報量は多い分だけこちらの注意が散漫になりやすく、マルチタスクで脳の処理機能が下がってしまうのではないか、と。いかにもありそうっすね。

 

大事なのは傾聴だ。向こうが何を言っているのか、どのように言ったのかについて考えれば、仕事相手との理解も深まり、個人的な関係性も改善するはずだ。

 

ってことで、他人とのコミュニケーションを深めたければ、相手の目を見るふりをしつつ意識は声のトーンに向けておくのがよさげ。私のように他人とのアイコンタクトが苦手な人にもよろしいのではないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。