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ひらめきが生まれる瞬間の脳をスキャンしてわかった、創造性を高める7つのポイント

perceptions

  

「ユリイカ・ファクター」って本を読んでおります。著者のジョン・キャニオス博士はドレクセル大の神経科学者で、ひらめきやアハ体験にまつわる最新の研究をわかりやすく教えてくれる楽しい一冊。

 

 

著者の研究内容は、ひらめきの瞬間の脳をEEGやfMIRで測定するというもの。具体的には、「象・緑・海に共通する言葉は?」みたいなクイズを出して、参加者たちの脳の活動を調べたんですね(ちなみに答えは「亀」)。

 

 

すると、クイズを直観だけで説いた参加者は、右側頭葉から大量のガンマ波がドバドバと出現。逆にクイズを分析的に解こうとした参加者には、目立った変化は出なかったらしい。ちなみに、2004年に脳科学者が仏教僧を調べた実験(1)では、瞑想の時間が長い僧侶ほどガンマ波が出たなんて話もありまして、このあたりの関連も気になるところです。

 

 

で、基本的には、

 

  • 直感的な人は右の後部頭頂葉が活発
  • 分析的な人は左の後部頭頂葉が活発

 

って傾向が強いんだけど、なかには場面によって直観モードと分析モードを自在に切り替えられる人もいるらしい。これはうらやましいですねぇ。

 

 

さらには、ヒトは集中力が高まると前頭葉の動きが活発になっていくんですけども、クリエイティブな人は前頭葉の活動が弱い傾向があるとか。実際、ADHDのヒトが創造性テストで高得点を取るのは珍しくないそうで、このあたりは「気が散りやすい人ほど創造性が高い!」で紹介した話と同じですね。

 

 

以上の話をふまえたうえで、良いアイデアを生むために大事なポイントは、以下の7つであります。

 



 

 

1 ポジティブなムード

とにかく30年以上にわたって、ポジティブなムードが創造性を生むことがくり返し実証されております。不安や悲しみが多いと、ヒトの脳は分析的な方向へかたむいちゃう。これは、税金の計算や車の運転のような正確性と安全性が必要な作業では有効なんだけど、クリエイティブの面では悪影響。

 

 

というのも、クリエイティブは知的なリスクをともなう行為なので、「安全」や「守られている」といった感覚が絶対に必要なんですな。新しいアイデアを思いついても、いちいち「これは間違ってるかも…」とか不安になってちゃ話が前に進みませんからね。

 

 

なので、著者によれば「締め切り」も創造性には逆効果。無意識のうちにメンタルが脅威を感じるので、創造性よりも分析的な機能がオンになるんですね。とはいえ、締め切りがないとついダラダラしちゃうんで、このへんのさじかげんは難しいところですが…。

 

 

ちなみに、脳の分析力と創造力を同時に使うのは不可能とのこと。意識して場面にあったモードを使うしかないようです。

 

 

2 広い空間

現実の作業空間の広さと脳内の広さには関連があり、せまい場所でいろいろ考えていると、発想もどんどん縮小していっちゃうんだそうな。小さな部屋に詰まって会議をしてると、視覚的な狭さが脳の分析モードを起動させて、どんどんアイデアが出なくなっていくみたい。

 

 

いっぽうで、見晴らしがよくて天井も高いデカいオフィスだと、視覚的な広さにより創造モードが起動。幅の広い発想がしやすくなるみたい。そういえば、ピクサー社のオフィスもまさにそんな感じ。当然、一番いいのは自然のなかを歩くことで、メンタルも改善して良い発想が出やすくなるとのこと。

 

 

3 とがった物を置かない

これは著者自身の実験でわかったことで、ペーパーナイフやカッターのように鋭利なオブジェクトを周囲に置くと、無意識に脳が脅威を感じてしまい、やっぱり分析モードに切り替わってしまうとのこと。つまり、だだっ広い空間にゆったりした柔らかめのソファなんかを置いた環境が良いってことですかね。

 

 

4 青か緑色を使う

赤は警戒色などと言いますが、実際に脳も赤色に対しては脅威や興奮をおぼえてしまい、分析モードに切り替わりやすくなるんだとか。繊細なヤツですね。

 

 

いっぽうで青や緑は大空や自然を連想させるので、脳がリラックスと安心感をおぼえ、創造モードのスイッチが入るとのこと。以前に「デスクに観葉植物を置くだけで、15%も良いアイデアが浮かびやすくなる」や「青い壁紙を使うと創造性が上がる」って話を紹介しましたが、まったく同じ仕組みですね。

 

 

5 睡眠と休憩は超大事

なにか困難にぶつかったときは、とりあえずその問題を忘れて休むのが上策。休憩のおかげで脳が創造モードに入り、休んでる間も自動で問題の解決策を考え続けてくれるんですね。いったん寝たほうが良いアイデアが浮かびやすいのも同じ仕組み。

 

 

また、睡眠には、日中にゲットした情報をつなぎあわせて、記憶に残しやすくする作用もあるんで、著者いわく「睡眠こそがもっともパワフルなひらめきツールだ!」とのこと。

 

 

6 なにもしない

これは「ときには何もせずにボーっとするほうが創造性とモチベーションは高まる」で書いたのと同じ話。なにもせずにボケーッとしてるときは無意識の動きが活発になり、普段は無視しがちな情報をつなぎあわせて、新しいアイデアを生み出しやすくしてくれちゃう。

 

 

この現象は心理学で「孵化」と呼ばれてまして、睡眠中にも似たようなプロセスが働くとのこと。いっつも忙しく何かを考えているような方は、つねに脳が分析モードに入ってる可能性が大きいので、意識的に何もしない時間をもうけるのは超大事。

 

 

7 シャワーを浴びる

シャワーには、自分の肌と周囲の環境の境目があいまいになったかのような感覚があるため、脳が創造モードに切り替わって「孵化」のプロセスが進みやすくなる。周囲との境目がなくなったせいで、あたかもまわりの空間が広がったみたいな錯覚が生まれて、自然と発想も広がっていくんだそうな。おもしろいですねぇ。

 

 

まとめ

そんなわけで、いろいろ書いてきましたが、要点を一言でいえば「良いアイデアを生むにはリラックスが超大事」ってことでしょうか。非常に当たり前の結論ですけども、想像以上に脳はビビり屋さんなので、周囲が赤かったり尖ったものがあるだけでも創造性は落ちちゃう。

 

 

なので、できるだけ脳に「いまは安全ですよー」「何も嫌なことは起きませんよー」と教えてあげるのが大事そうですね。かわいいヤツです。

 

 

ちなみに、本書にあった以外の創造性アップネタでいうと、

 

 

 

credit: subliminal_sri via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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