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研究者「みんな実際の効果よりも『ポジティブ』に多くを期待しすぎている」

Positive

みんなポジティブシンキングに期待しすぎ!」って論文(1)がおもしろいのでメモ。




これはユタ大学の実験で、ヒトがポジティブ思考に抱く期待値と実際の効果のズレを調べたもの。最初の実験では、参加者たちを3つのグループにわけて、以下の作業を行ってもらったんですね。

  1. 事前に「あなたは数学がニガテです」と言われて気持ちがネガティブになった状態で数学テストを行う
  2. 事前に「あなたは数学が得意です」と言われて気持ちがポジティブになった状態で数学テストを行う
  3. 上の2グループのどっちが成績がいいかを予想する

すると、全員が「ネガティブなほうが成績は悪いでしょう!」と予想したわけですが、実際はさにあらず。ネガティブだろうがポジティブだろうが、成績はほぼ変わらなかったんだそうな。


もう1つの実験では、参加者たちに「ウォーリーをさがせ!」的な作業をやってもらったものの、こちらも結果は似たり寄ったり。ポジティブな状態で挑んだ参加者は5%ほどしかスピードが上がらなかったそうで、特に統計的には有意な差が出なかったらしい。


いっぽうで、作業の結果を見守った参加者たちは、ポジティブなほうが平均で33%ほど成績が上がると予想したそうで、こちらも大きな食い違いが出ております。


もちろん、これはポジティブ文化が華やかなアメリカの話ですし、そもそもの実験デザインがネガティブに有利な気もしますが(気分が沈んだ人は集中力がアップしやすい)、それなりに日本でも当てはまりそうな気はいたします。


研究者いわく、

わたしたちは、良いパフォーマンスを発揮するためにはポジティブな状態が必要と考えがちだ。そして、周囲にもポジティブさを期待するし、ポジティブに価値を置く。しかし、それが実際に役に立つのはか別の話だ。

とのこと。実際、ここ数年は「嫌な気分にもメリットはある!」って研究が盛んですし、ポジティブ思考に効果がないケースも多いってデータもかなり豊富ですしね。一時期のポジティブ心理学ブームも落ち着いて、いまは「嫌な感情に巻き込まれず、そのメリットを活かそう!」って考え方のほうが勢いを増してる感じでしょうか。



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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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